SECURITY SHOW 2002基調講演

スクール・セキュリティ
人間の直感と機械技術が安全への道

岩手県立大学学長・元東北大学総長 西沢潤一氏

常時毒物を扱う研究開発

こういう場所でお話するのは予想もしなかったことですし、皆様も私が何をしゃべるのかと思っておられることでしょう。
私は半導体の研究開発をやっていまして、きわめて危険な技術を使います。その頃に、うちの大学ではありませんが、ある化学工学の実験室の大学生の話ですが、危険な薬品である青酸カリの管理ができていないと叱られました。大学の実験をしているところでは危険な青酸カリを使っておりますが、いちいち教授やら何やらに承認をもらって分量を計って金庫から出し入れしていたら、実験はできなくなります。結局は台の上に青酸カリが置いてあることになるのです。教授会で部長がそういう危険な薬品は鍵をかけて保管せよと言ったものですから、私は思わず、手を挙げて、抗議しようとしましたが、さすがに思いとどまりました。
アメリカに行きました時に、ちょうどイギリスからアメリカの研究所に出稼ぎに来ていた人と話をしたことがあります。彼はセキュリティ、セキュリティといわれて金がかかって大変だと言うのです。そういう点では、ドイツでは今は元に戻したみたいですが、われわれのやった三族元素と五族元素のくっついたようなものの研究を止めました。砒素とかアンチモンとかが毒物の対象として頭におありでしょうが、砒素自体はたいしたことはないですね。亜砒酸というのは猛烈に強いですから印象に残ります。いわゆる日本語で言えば劇物です。亜砒酸の危険性とアンチモンの危険性は似たり寄ったりです。そういうものはしょっちゅう使います。

私たちが研究を始めた頃に、学生にはなるべく毒性の低い物で実験をさせました。しかし、どうしても最先端のことをいじろうとすると、毒物の選り好みができなくなります。大学ではそれほどきびしい安全装置を備えることができません。半導体工場で毒物が出るということで、早くそれを検知するために小鳥を飼うのです。小鳥というのは毒物に大変敏感なので小鳥が死ぬというのをバロメーターにしていました。
そしたらアメリカ人が見に来て、何を馬鹿なことをやっているんだ、小鳥を飼えば小鳥の糞でもっと汚くなり、それだけで半導体工場として失格になる、と言った人がいました。
アメリカ人が言うのですが、これからの研究というのはセキュリティの機械がいろいろ要って実際的に、経済的に成り立たなくなリます。そういうことを考えますと、セキュリティ産業の一つの行き方を示すものになるのではないか、と考えているところです。

最近になって、いろいろ考えてみた結果、やはり最先端技術を持たなければ日本の工業は成り立たなくなることがやっと分かってきたようです。何しろ人件費が中国の14倍とか、中国奥地の人の40倍といいますから、こういう中国と対抗しようとしたら、向こうの人ができないようなノウハウを持ってきて、それで仕事をしていかなければなりません。そういう意味では最先端技術を日本がちゃんと把握していかなければ、資源のない日本ですから、高度の生活水準を保つことが難しくなります。
バブルが破れてしまう。しかし、なるべくでしたら恵まれた生活を続けて行くことが望ましいので、管理技術者が責任を背負って、なるべく安上がりに危険なものを十分に使いこなすことをしなければなりません。

危険物を使わせて事故を起こさない教育

そのためには自分が身を挺して最先端技術をマスターしなければなりません。学生の面を見ながら思うのですが、こういう連中、可哀想だが、これから就職しても行く先では、極めて危険な劇物を日常茶飯事のように扱わねばなりません。しかも、技術的にも新しいことをやらねばなりません。これは研究所の絶対条件です。人がやったこともないようなことをやらねばならないから、そうすると、彼らが大学のうちから危険物の取扱いに慣れておかねばならないということで、私はある時から急に転換をいたしまして、研究室の中では、もちろん限界はありますが、危険物を使わせるようにしました。
幸にも、僥倖というべきかもしれませんが、在職中に不幸な事件は起きず、辞表をださねばならないことはありませんでした。そういう意味では、自分から身を挺してそういう時のやり方を教育の中で実践していったという気持がございます。
初期の頃は、貧乏でして、エアコン一つなかったのです。湿度が高く、ゴミがたまるのは当たり前で、そういう中で半導体の実験をスタートしたわけで、いろんなことをなるべくお金がかからない形で、そういう最先端の技術を危険を避けながらやってきました。
  ところが、砒素とかアンチモンなどは結構劇物ですが、そういったものを取り扱った机を別に分けるわけでなく、いくら言い聞かせても、学生は先程までそれをいじくっていた机の上で弁当を開けて食べるわけです。こちらは冷や冷やするのですが、そういう意味では彼らは慣れたもので平気でやっていました。危険を冒さざるを得なかったのです。

最近特に頭のみで勉強してくる子供たちが多いのですから、現物に対する適応性がないわけで、先輩が石英管を持って来まして、その中を洗えといわれて、そこにあった電子工業用弗酸を石英管の中に流しで空けて流してしまう。まだ汚れが取れないともう一本空けてしまう。買ったばかりのがなくなっているから、先輩がどうしたんだと言ったら、皆洗うのに使ってしまったということで、洗い方から教えなければならない。
それくらい大学に入ってきた連中でも常識がないですね。その中でセキュリティを実行するのは容易ではありません。これだけ社会が進歩したから、セキュリティに対しては関心があるのは事実ですが、いざ自分がやる段階となると、知識が退化しているわけです。それを考えに入れて、これからセキュリティ産業のあり方を考えていかなければいけません。
今のお話は学校は学校でも末の大学生のことですが、小学校になるとまた別の問題があるわけです。

今たまたま私は、原子力産業の方をやらされているのですが、だいたい原子力というのは下らないことに無駄金を使っていて、あんなことは絶対にやってはいかんという事故が起きました。事故が起こりましたら、いきなり東大の卒業生で、私がお世話になった先生の弟子の人から、「何とか始末してくれ、『もんじゅ』がつぶされてしまいそうなので助けてくれ」などと、3回も頼まれましてエンジニアとしての責任感もありますから仕方がありません。
これは申し上げるまでもなく、大変なセキュリティで、一人一人が手厚く守っていかなければなりません。手厚く守っていくソフト面と機械の安全性、ハード面のセキュリティ、両方ないと駄目なんです。扱うものの危険性は昔と違ってきております。見ても分かるものではありません。思わぬところから思わぬ危険が出て参りますから、それに対しては、しっかりした科学技術的基礎を持った機械を生産していく必要があります。
あとで我々のほうでやっている話を申し上げますが、私自身も科学技術の力を使って世の中に貢献することをやりたいと思っています。その意味で、両方をやらなければ結果的にはどうにもならないと思います。

研究者は危険性を探求しながら

特に最初の初期の研究者というのが、自分の専門知識以外に、自分の使っている機械とか材料の危険性を十分に頭に入れて対応しなければ、最先端の日本の科学技術は損なわれます。ひいては国力が低下することのなります。大きな事を言うなと思われるかもしれませんが、これは現実問題です。絶えずその危険性を探求しながらやっていくという方法をこれからも、育てていかなければいけません。
これが大体完成された時に一般の方に使っていただく。生産工場においては昔から言われているフェイルセイフとかフールプルーフとか言われるやり方がちゃんと開発されてなければいけません。研究開発の今まではあまり対象にされなかった裏の一面もやっていかなければいけません。それがすなわちセキュリティ産業というものにになっていくと考えております。
一方、研究所の方はやることが多様ですからすべて機械というわけには行きませんので、人間的な力に依存することになります。

その意味で、学校などの場合もそうですが、これから学校なるものを守っていかなければならないわけですし、この前のように悲惨な事件がありました。この場で申し上げるのがはばかられることがあるかと思いますが、お察し申し上げるしかないのですが、世の中がだいぶおかしくなって来ていますから、ああいう普通では考えられない人が出てきて、自分の不満、いらいらをいたいけな小さな子供にぶつけるということが起きるのです。
ああいう普通の人ができない残酷なことをする人たちは、苦しい生活をしてきたからと、昔教えられたように思うのですが、若い人たちを見ていますと、そうでもなさそうです。
生まれた時から今日までのヒストリーがその人、一人一人の人間としての完成された時の形に影響を与えていると思います。どっちかと言えば、あまりにも恵まれて自己中心主義に育った人たちはとかくそういう行為に走り勝ちであります、と申し上げてもよいかと思います。いかがでしょうか。
すなわち、これからお子様たちを育てる立場から言えば、自分の子供が将来社会人になった時に、ちゃんとルールを守って欲しいもので、これは親として大きな義務であります。

人間には底があります。平素立派なことを言っているのが、いざ現実にどういうことをしているかと言いますと、その人の具体的な行動は、まったく裏腹な行動をしているのもいます。行動の大変立派な方でも、いざ危機に面した時にその人がどういう態度に出るかは難しいところです。タイタニック号の上から身を投げた人とか、いろいろいるわけですが、ご婦人に自分の命が助かるチャンスを譲って最後に船とともに沈んだ人もいますしそうしなかった人もいます。平素格好のよいことを言っている男でも女性を押しのけるのが沢山いるわけです。幸か不幸か、そういう人はその当時ほとんど伝わらなかったと思います。そういうチャンスが必ず来るわけですから、なかなか立派なことを言っておられても、実際子供たちにどういう態度をとるかは分からないのであリます。必ずしもその場に居あわせた大人が身を挺して児童を守ったかどうかは言えません。もちろん、その行為は大事な行為でありますが、強制はできるものではありません。
そういう意味では、精神的なモラルがこれからの社会では必要でありますが、当然のことながら、命を冒してそういうことをやることを期待してはいけないのであります。その分は科学技術の力を応用します。

そのことで、この頃、飛行機に乗るときに愉快な気持でお乗りになることはないのではないですか。いちいち犯罪人扱いにされて、下らない調査をされて、ちょっと差し障りがありますが、それでいながら肝心かなめの犯人はちゃんとどこからか入ってきて犯行に及びます。
ちょうど私はイスラエルに学会があって行った時、空港を出ようとした時、出国検査をしつこくやられてカメラの中まで調べられ、日本は軍隊はなく、戦争行為については、憲法で禁止されているから調べる必要がないよと言ったのですが、その一週間後にテルアビブのロッド空港の事件が起こりまして、私も唖然としました。ですから、日本でもニューヨークでもテロ行為はけしからんと言いますが、日本でも随分やったことです。国際的に見れば、自分らがあれだけやっておいて、今頃格好のよいことを言って、不信感を買うこともあります。
そういう意味で、メンタルのものでそういうことを押さえていかねばならないのはいつの世になりましても避けることができないのであります。従いまして、たとえば空港であまりの不快感を持たずにすっと乗れるようにする、それでいながら急所を押さえたチェックをして、その人たちが凶器を持っているかどううかを調べることになります。
空港などではだいたい、金物をチェックします。印鑑のケースを持っていて、そのケースが金属で、これ一つで検知器にひっかかってしまいます。あんまり良い感じがしないのは皆様方も味わっておられると思いますが、プラスチック爆弾なるものがありますが、どういう方法で調べるかをいろいろ研究して見る必要があります。しかも個人個人の人権が守られた形でチェックが行われてのが望ましいわけです。いちいち持っているものを全部開けられて長く見られるというのは愉快な気持でいる人は一人もいらっしゃらないでしょう。
そういうところは、科学技術が十分に補っていかなければならないと思います。何の害もない小さなものまでがひっかることは、人間に不快感をもたらすことになります。
そこのところを、いかにして肝心かなめの凶器を発見するかということになるのですが、プラスチック爆弾みたいに金属製のものでなくて危険なものがあリます。この間の靴の底に爆発物をしかけたのがありましたが、そんなことまで考えますと、失礼な言い方になるのですが、むしろ、セキュリティ産業は今までほとんどなかったんだと言うことにもなり、また、それだけに、これから発展が見込まれる大きな分野であることを私は予想している所です。

設計ミスから予想通りの事件に

具体的に現場でどんなことが行われるかということをしなければなりません。たまたま原子力発電所や原子力なんてことををやらされる羽目になったのですが、要するにその頃までは第三者的な考えでいたのですが、朝、新聞に事件が報道されて見ていましたら、そこに挿絵が書いてありました。こういう風に温度計が設計されて、こういう風に事故が起こった、設計段階でミスがあった、と書いてあります。
いずれにしても、いくら上等な電子計算機を使ったにしても、正当な理論的裏付けがあって使わなくてはいけないのです。往々にしてミスのときにものすごい計算機を使ってやっても言い訳がでるわけですが、昔いろいろの会費の請求書が電子計算化されていて二重請求などのトラブルがありました。お詫びの手紙が来ればよい方ですが、それでも電子計算機ミスですというのがありますが、ひどい話です。電子計算機がミスしているわけでなく、それはセッティングが悪いのですから、ソフトウエアを使ってやった人が間違っているのです。それをみんな機械のせいにしてしまう。
要するに、そんな態度ではセキュリティは守れないと思います。何度も申し上げていますとおり、やはり機械の方のせいにするのではなく、機械を使う人、設計者もちゃんとしなくてはならないことになってくるのです。

危険なものと注意深くつきあう

21世紀になれば今まで申し上げたからお分かりのとおり、セキュリティ産業は、残念ながらと言えば失礼になりますが、大きな転換をせざるを得ないと思います。うかうかしていますと、ドイツが一時やったように、危険な産業は全部止めてしまう、原子力産業がそうなっています。しかし、この前行って見て来ましたら、ほかにないからこれでやるんだと言うわけです。昔から忌み嫌っていた産業ではありますが、注意深くやればよいのであって、難しいことで事故が起きたのではないのです。極めて初歩的な、大学の一年生でも分かるような注意をちゃんと守ってやっていけば、そういう事故は起こらないはずのものを、専門家と称する人たちがそれをやらないことが事故の原因になることが多いのです。
ちょうど4日(2002年3月4日のこと)の日経に出ていたのでしょうか、東大に居られた生駒さんという、今、日本テキサスの社長さんが大学の卒業生に対して保障を与えろというのです。しかし、そういうことをやりますと、あれも覚えていけ、これも覚えていけ、ということになります。
昔、お医者さんになる人はあまり勉強しなかったのですね。それで随分道楽者が出たりしたのですが、たとえば、筋肉の名前を全部一通り覚えさせられたのですね。細かい知識ばかりで、それで、やる方は面白くなくなって、だんだん遊ぶくせがつきます。しかし、逆に言えばいえばその頃、必ず持っていたのが人間の命に対する大変な愛情なんです。自分を可愛がってくれたおばあちゃんが死んだ、その悲しみがその子の将来医者になろうという決心をさせることになります。そういう話が現実に沢山あったのです。文学で言えば、山本周五郎先生の「赤ひげ診療譚」というのがあるし、それを映画化した黒沢明の「赤ひげ」もあリますが、そういう、つまり患者を人間ぐるみ大切にしようという人たちが医者になりました。ですからこういう医者は例外になるかもしれませんが、自分の前に現れるであろう新しい患者がいるわけです。そういう患者のために、自分がしょっちゅう勉強していて、今まで知らなかったような病気が出た時にちゃんと文献を読んでいて努力をしたわけです。

機械に勝る人間の能力

医者に行くと、いろんな医者がいますけれど、医者は土日も自由に遊べないと子供の頃にいわれたものです。そういう形でのセキュリティがちゃんと医者の世界にあったのです。そんなことで決して昔からあったセキュリティというものが、低劣なものではなく、むしろ最近になると個人の人権を大事にすることから、土曜日曜休診とか出てくるのです。
私の親父は百三歳で五年前に亡くなったのですが、九十何歳の時、私が朝飯を食べていたら親父が居間から出てくる。ふと気づくと足音が正常じゃない。おかしいなと思って女房に親父の頭に異常が起こっているかもしれないからすぐ病院に連れて行って診療をしてもらえと言いました。それで医者がいろんな機械を使って診てもらったのですが、まったく九十何歳にしては何の異常もありませんから心配いらないといって、金曜日だったのですが、月曜日の朝までお預かりしましょうということでした。ところが、その夜から異変が起きて悪い症状がでたのですが、その日の夕方は医者がいないのですよ。月曜日の朝に医者が来た時には片半身ぶくぶくにふくれてひどかったのですが、とにかくそのあと治療して事なきを得ました。土日休診ということの被害者であります。やはり診療だけでも機械では不十分なのですね。機械より息子の直感の方が正確でした。今の機械には限界があります。まだまだ技術開発が必要だということを申し上げるための一つの例です。

最近うちで出ている一つの成果をお話したいと思います。まだまだそういう方面における新しい機械が伸びていくでしょうし、それは大きな産業になるだろうと思います。
ここにありますが、これは水蒸気です。水蒸気を入れてある容器に電波を通すのです。これは1気圧より少し低い。87センチこれをパイプを通してある周波数を通します。これは恐らく皆様方まったくご存知でない分野でして、テラヘルツです。メガヘルツはテレビ放送の周波数で、さっきもうしましたテラヘルツの周波数の下になってきます。その次はラジオ放送に使っているメガヘルツ波です。人類はずっと周波数の高いところまで使えるようにして参りました。
増幅できるようにマルコーニあたりが電波を初めて使い、大変高度の通信ができるようになりました。
周波数は財産でして、一つ周波数の割当をもらうと、放送局を作ってお金をとって広告したりするのに使えますから、皆さん方電波を欲しがります。我々技術者は絶えず、高い周波数を使えるようにして皆様に分けて差し上げる。上へ上へと使えるように持ってまいりました。
いろんなところにレーザーが使われるとか、あるいは衛星を使って世界中の放送が聞けるとか、今日の新しい世界が展開しました。

昔は手紙しかなかったのです。東洋には狼火台という光通信の元祖がありました。それが、アメリカに行った東洋人のインディアンたちは煙信号をやりました。    煙を断続的に出して見るわけですから一種の光通信です。光通信を世界でやったのはアジア人です。アジア人の才能はあるようでして、私たちのDNAにもあると思います。
ところが、光源になったのはレーザーでして、半導体レーザーを私が考えたのは、1957年ですから、もう40何年前ですが、その時は誰も信用してくれなかったから、お金がもらえなくて実験ができなかった。まあ少しはやりましたが。
結局アメリカで私が喋ったのが原因で向こうで実用化に入ったものですから、アメリカで光通信が開発されています。口惜しくてしょうがないですね。
しかもその時に言われたのが、これから先、一体光を通してどうして通信するのかということでした。さっきお目にかけたように電波が水蒸気がありますので吸収されてしまうのです。ですからお天気が悪くなって湿度が高くなったら使い物にならないのです。そこを考えたらどうだ、何とかしろよ、と言われたものですから、いろいろ考えてまいりまして、ガラスでファイバーを作るのが一番よろしいと気がついて特許にしたわけです。
これが光通信の開発につながったのです。しかも、ファイバーについてもいろいろなことがあったのです。これから先、光通信の実用化では負けたのですから、これから何をやるかを考えなくてはいけません。テラヘルツをやろうかと考え、テラヘルツをを開発することによって光通信をアシストしょうとしています。
しかし、分子が吸収しちゃいますから、通信には使えないのですね。その時に私が考えたのは、逆を読んだのです。光を発生させる時に邪魔になるのが水蒸気とか、あらゆる分子が邪魔になるのです。物がある時には使えないのです。
逆に言えば物を測る時に使ってやろう。また、分子振動を使えば、増幅発振が起きるぞとテラヘルツの発振に使うことを考えました。それからそういう周波数特性を使ってテラヘルツの周波数を出してやろうと考えまして、発表してあったのですが、二つ目は、光ファイバーを使って通信をやることです。それから、最後の一つは、これから通信といえば信頼性がないと困るわけです。誰でも話したいときには必ず的確に話ができないと困ります。こわれないようにしなければなりません。特性が安定しなければいけないということで、材料をよくしてやろうとしまして、すなわちガリウム砒素の完全結晶を作らなければならないと、この三つを発表しまして、うまくいっています。ガリウム砒素の完全結晶は今、住友電工さんで世界の50%のシェアを持っています。
光ファイバーはご存知のとおり世界中がこれを使うことになっています。残ったのは、テラヘルツ周波数を分子の振動を使って出すということであったわけですが、その方向でわれわれも一生懸命やってきました。とうとう、うまくいきまして、二種類ができ、パワーが急速に上がりました。さきほどお目にかけましたような水の分子がどんな吸収を持つかということを今までになく非常に細かく測れました。
そうしますとこれが何に使えるかということです。吸収してしまうと材料の研究にはよいのです。
こういう材料を作ったけれどうまくいっていない、たとえば、水蒸気というのは水素二つと酸素一つです。片方が重水素になったらどうなるのか、これはあり得るかどうか分かりませんが、それは電波をあててやって吸収がどれだけあるか、それが分かるようになると、使い道があります。ですから分子が何かということもこれで決まってまいります。たとえば、さすがアメリカですね。一昨年の暮れにそういうことができるのではないかと言ったのです。
たとえば肺がんがあります。最近学校で百人近くの先生や生徒が肺結核に冒されたということが報じられました。あんな菌は絶滅したんではと思っていましたが、薬に対して抵抗力を持った新しい結核菌がまた出てくるというわけになるのです。これは定期検診で発見すればよいわけですが、うまくやれば、そのへんに器械を置いておいて、その前を子供や先生が通ると、電波をあてて結核にかかっている人に反応するというのも夢ではありません。それができると社会のセキュリティに大きな貢献ができるわけです。セキュリティ産業への大きな課題です。

癌を見つける電波

これから申し上げることは、今日の夕方政府に行って研究費を出してもらうように掛け合うつもりのものです。
これからセキュリティネットワークの世界戦略ですね。たまたま肺がんの患者を調べる時には今は随分難しいことをやるわけですが、たとえば電波をあててやると、肺がん独特の分子がありますから、そういうものが集まってまいります。そういうものを見ていると、これは肺がんかそうでないかが分かるわけです。それを言いましたのは一昨年の暮れですが、去年の暮れに東芝がケンブリッジ大学の研究機関で発表してしまいました。世界的な早さというのは我々が考えているより余程早いと認識させられるわけです。一部はうちの方がはるかに良い機械を完成させていますから、これから研究費を出してもらって、お医者との連携作業で企画しているところです。どういうところに研究費を出すかは重大なことでして、これはうまくいくと世界産業になります。
東芝ケンブルッジが発表したものはすでにインターネットに入っているようですが、これは亡くなった方の肺を切り出しまして、特定の波長をあてて、それは目に見えませんから、周波数変換をやる。すると肺の映像は写真になって出ていて、肺がんにかかった所だけ墨がついたみたいに黒くなっています。大きくなってから分かるようではいけないわけで、我々がやるのは小さなうちから見つけるのです。切り取ってから見るのではあまり有難くありません。電波は身体に入って向こう側に抜けるのです。こちら側から電波がはね返ってくるのを見る、あるいは反対側から抜けてきた電波を見る、そうすると肺がんに罹ったところは光が吸収されて通りませんから、ある程度原理的には分かるはずです。
これから具体的に調べてみてどの程度の肺がんなのか、チェックしていかなければならないわけです。最初のうちは不幸にして亡くなった患者さんの遺体の一部頂いて測るところからスタートしたいと思いますが、いずれにしましても生身の人間をこちらからあてて反対側から映像をとるだけで分かるようになったら、衣服を脱がねばならないかもわかりませんが、そのうちに、うまくいけば衣服を着たままでやれるわけです。どれくらいの大きさまで分かるか、というバランスの問題でもあります。

炭疽菌も電波で発見

極めてホットなニュースです。
これから外国と競争関係を保ちながら、新しい展開をしたいと思います。一番敏感なのはアメリカでして、今ちょうど炭疽菌で悩んでいます。たとえば封筒に炭疽菌が付いているとしたら調べるのは大変です。炭疽菌に敏感な周波数というのがありますから、こういうのをたとえば郵便局のコンベアで流れてくる郵便物に電波をあてますと、菌で汚染されている郵便物は光が抜けにくく反射しにくいのです。全部菌で冒されていない場合は全部光が抜けます。
いずれにしても郵便物をオンラインでチェックできる可能性があるので、アメリカではすでに全郵便局にこういうものを設置することを計画しています。
とたんに大騒ぎされた理由でして、あまり騒がれるのはつらいのですが、始まった以上は何とか競争に負けないようにしたいと考えております。

いろいろ考えてみますと、以前に大騒ぎになった「0−157」の問題ですが、簡単に試験出来ないので、全数試験はできないわけです。いま機械そのものはお目にかけている通りですが、電波を出す機械と受け側のテレビのブラウン管がありまして、ちょっと高価です。
最初は値段がかかるかもしれませんが、あまり難しいものを使っていませんから、やがては相当安い値段になるものと考えられます。
さらには、セキュリティから外れるかもしれませんが、逆に言いますと、がんにかかった所に電波をあてますと、がんにかかった所だけが電波を吸収するのですから、分かり易く言いますと温度が上がります。薬を注射しておいて電波をあてますと、健常の部分は電波を吸収しませんから、温度は上がりません。がんにかかった部分は温度が上がって、副作用のある治療薬とはげしく反応しますので、かなり副作用のあるがんの薬を注射しておいても、がん細胞にかかった部分だけが薬と反応して、健常部分はあまり反応しないということで、薬の副作用が相当押さえられることになるものと考えられます。このようなことが今は夢物語の段階ですが、いろいろと考えられるところでして、これからそういう方向に展開していきます。つまり世話を焼かせずに、いちいち面倒な服を脱がずに、できれば上半身裸にして、こういう検査が現実にできるのは有難いことで、役に立つことであります。
口で言ってるばかりではいけませんから、我々の仕事の最新版をお話して、結果としてお目にかけることができないのは残念ですが、われわれの志向しているところは、そういう方向でして、セキュリティ産業が大きな産業になることを心から期待しております。
(2002年03月25日号)


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