子供の安全を守る地域の取り組みに
行政と警察はどうかかわればよいか

警察庁生活安全局理事官 山下史雄氏

 池田小学校の事件は学校内で起こったもので、学校の安全を考えるのは勿論大事ですが、犯罪者は町の中を通って学校に行くわけであります。そこで、地域において子供さん方を守るという観点から若干お話をさせて頂きます。
 まず子供さん方を対象にした犯罪の発生状況ですが、傾向的に幼児を含む小学生以下に対する性的犯罪が増えています。特に女の子に対する強制猥褻事犯、いたずらが、平成7年の1224件から12年には1575件へ増加していることを、私どもは非常に憂慮しております。
   発生場所を調べますと、子供さん方が行き来する身近な生活空間、一般道路とか公園とかが増えている。略取誘拐なども殆ど道路あるいは公園で起きますし、学校という空間のみならず、子供さん方が始終遊んでいる身近な空間の安全性が脅かされているというのは、大変大きな問題です。
 小出先生がご専門である街全体の安全について、国土交通省住宅局の共同住宅における防犯性の研究会には私どもも加わっています。これは元々ピッキングの増加に呼応するものでしたが、問題意識としてはピッキング、侵入盗だけでなく、団地なら敷地内の公園や駐車場、住棟の中でもエレベーターホールなど、共用スペースでの性犯罪が増えておりまして、生活空間での死角が生じていて、犯罪を行う側からすればやりやすい状況にあるのではないかという認識です。
 子供さん方にとっても我々にとっても、身近な安全が脅かされているという状況をどうするか。当たり前のことですが、私ども警察が犯罪が発生した時はきちっと検挙する、パトロールを強化する、その他やれる限りの防犯対策をきちっとやるということがまず大切と、今真剣に取り組んでいます。
 それを前提にしつつも、それだけでは安全は守りにくくなっているのが実情です。警察や行政機関が一生懸命それぞれの対策をとるのは当然として、地域の安全安心の確保のために、住民一人一人、町内会、自治会といった単位、学校の問題であれば学校の方、PTAの方々、自治体や企業、それぞれのお立ち場で安全というものを考えて頂かなければいけない社会に、今の日本はなっているのかなという気がします。
 防犯対策には、これをやったら100%、これなら完璧というのはないと思います。やはり皆の努力によって安全性を少しでも高めていく、犯罪のやりにくい環境づくりで安全のレベルを上げていくという不断の努力が大切ではないか。被害が発生しても最悪の結果を招かない、できるだけ軽微な段階でおさめる。我々警察が中核になるのは当然ですが、ぜひご協力をお願いしたいと考えています。 私どもでも、子供110番の家の機能をきちんとするとともに、郵便局、コンビニ、スーパー、ガソリンスタンドなど、子供さん方だけでなく、女性の方も何かあったら逃げ込める駆込寺を増やす、そういう地域との連携が大変重要かなと思っております。
 学校では子供さん方に対する防犯意識教育をしっかりやって頂くことを望みます。私ども警察も生活安全課の者が出向いて学校、PTAに話をしますが、学校、PTAも子供さん方に直接語りかけて頂きたい。また、地域からも学校からも警察に呼びかけ、安全対策を熱心にやっているというメッセージをいつも発信していることが大切と思います。
 池田小学校の事件を踏まえての私どもの取り組みをご紹介しますと、交番を拠点にしたパトロールの強化、警戒活動、通学時間帯・通学路を中心に子供さん方の安全という観点から制服による立番警備、こういったことを行っています。犯罪にならないまでも、声を掛けられた、追いかけられたという事犯は結構多いのが実情ですので、不審者に対する職務質問、通報への機敏な対応などを指示しています。
 学校安全対策につきましては、文部科学省とも連絡して、正当な事由なしに出入する者の排除、職員の定期的見回り強化などを要請していますが、大事なのは立て札、看板などをちゃんと表示する、利用者の事前申請を徹底するなど、学校もきちっとした態度で臨むことではないかと思います。
 安全確保には市町村など自治体の役割が非常に重要かなと思います。まちづくりという面で見ると街路灯が少ない、照明が暗い、人気のない公園がある、通学路にも連れ込まれそうな場所がある、死角になりやすい茂みがあるなど、広い意味での危険地帯が多いんです。こういうのが放置されているのは問題が大きいので、自治体でもいろいろお考え頂きたい。
 今週の月曜に民間ボランティア団体と警察庁(防犯協会)との意見交換会を設けました。今回の意見交換会は今までお付き合いしてきた方々とは違います。最近は社会貢献活動に取り組んでおられる団体が非常に多く、NPO(特定非営利活動団体)は内閣府のまとめた数字ではホームページで全国に4千数百認証されています。地域安全に取り組んでいる団体も3月までに285あってびっくりしております。地域から警察に、一緒に危険地帯をチェックしたいので協力してほしい、パトロールすべき道順を教えてほしいといった要請が増えており、学校を含めた地域の安全、身の回りを守る意識は高まっています。
 総務省の方で、地方財政計画から750億円出すことになりました。学校単位でまちづくりを市町村が補助する、その費用を国が見ようというスキームです。東京都は全学校に緊急通報システムを取り付けるため15億円を計上しましたし、警察庁の今年度の事業としても「スーパー防犯灯」と呼ぶ緊急街頭通報システムを導入しました。全国でまだわずか10カ所ですが、イメージ的にはカメラ付きインターフォンで、赤色灯の、警察と「どうしました」「知らない人に追いかけられて逃げてきました」といった応答ができるシステムです。学校・通学路の安全対策に活用できないかなと構想しております。
 繰り返しになりますが、いくらいい機器を設置しても、それをどう生かすかという意識(ソフト)がなければ、子供さん方の安全を守ることはできません。その意味で今ほど地域の力が必要とされる時はないと思いますので、ぜひ各方面の皆さんのご協力をお願いする次第です。
(7月25日号より)

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