[バイパス解錠]警察庁、新手口侵入盗に錠前確認、予防対策呼びかけ

危険な錠前900万個、
メーカー名、機種を公表

カム送り解錠対策

警察庁は9月13日、「カム送り解錠(別名バイパス解錠)」という不正な解錠手口により約900万個の鍵が破られる危険性があるとして、メーカー名、機種名を公表し国民に侵入盗等の未然防止対策を呼びかけた。又同時に、相談窓口を都道府県警察、日本ロック工業会、日本ロックセキュリティ協同組合、(財)全国防犯協会連合会等、錠前製造業者(美和ロック、ゴール、ショウワ、掘商店)に開設し、消費者からの問い合わせに対応する体制を整えた。
錠前メーカーには、危険な錠前の見分けかたや消費者にもできる対策部品の取り付け方等を、部品供給の窓口になる施工業者にも周知徹底させ、消費者に対して万全な対応ができるように要請している。

バイパス解錠とは特殊な道具を用いて、錠シリンダーを迂回し、直接錠ケース内部に働きかけてデッドボルトを作動させ解錠する手口。対策としては錠前製造業者が準備している錠ケース内部の隙間を防ぐ対策部品を取り付けること、リングスぺーサ等の錠シリンダーとドアの隙間をふせぐ対策部品を取り付けること等である。
危険性が指摘される錠ケースは美和ロック、ゴール、ショウワ、掘商店の4社が製造した15種類の錠ケース(表1)、合計約900万個が販売されている。

バイパス解錠はピッキングによる侵入と異なって、錠前を傷つけることがなく、解錠され侵入されても、不正解錠の痕跡が残らない。従って被害があってもバイパス解錠によるものか見分け難いところがある。
警察庁は本年5月中旬、カム送り解錠の道具が市販されていることを示す資料(広告)を入手して、900万個に上る錠前が狙われる危険性を確認した。5月末より6月初めにかけて全国の錠前製造業者等を招集、カム送り解錠に対する応急処置を指示した。その後、当錠前に関する調査、対策部品の実効性の検証を行った。国民の混乱を生じないように対策部品の供給体制を整え今回の公表となった。
なお、4製造業者が、バイパス解錠の対策済製品へモデルチェンジをした時期はゴールが昨年11月頃、美和ロックは今年5月頃、ショウワ、掘商店は今年9月12日である。製造業者からの出荷ベースであるため、小売において危険な錠前が確実に販売されていないとはいえない。


そこで警察庁生活安全局生活安全企画課の吉田英法課長に今回のメーカー名、機種名を公表して、国民に窃盗への未然防止対策を呼びかけた真意を伺った。

危険な錠前機種、問い合わせ先リストを公表
「危険を認識して確認して問い合わせを」

侵入盗に狙われる錠前 問い合わせて予防策を

――ピッキングで破られる鍵は7000万個とも言われて、安全な鍵への交換が必要でもメーカーの供給体制が間に合わなくて官民挙げての応急対策が実施されました。しかし未だに、約5千5百万個の鍵が残っていると聞きます。今回別の手口で破られる鍵が900万個と聞くと日本の鍵は大丈夫か、と誰もが不安になりますが、今回のバイパス解錠については、国民の求めに応じられる機器やメーカー、設備業者の用意が整ったということでしょうか。

吉田 消費者から需要があれば対応できる生産対策が整った、ということです。
跡形も残らないで解錠し、侵入される危険な錠前が使われていることを人々が認識することがまず第一、次に家の鍵が大丈夫か、確認して対策をメーカーに問い合わせることが必要です。

――危険な鍵は何処の地域と限らず全国的に売られたのですか。

吉田 メーカーから何処の地域に限定して、ということは聞いていません、全国的に販売されています。

――建物で見分ける方法は、有りませんか。マンションに多い、とか、一戸建用とか・・・

吉田 ありません。確認の方法は、錠シリンダーが扉から突き出している錠前の形とメーカーが提出した機種の一覧表に基づいてアーマープレート(注)の刻印で確認するしかない。
(注)アーマープレートとは、錠ケースが取り付けられているドアの側面部(デッドボルトが出入りする部分)に取り付けられた金属製の化粧版をいう。

―― 消費者もよほど注意深く見ないといけないですね。この地域が狙われるのではないか、など地域の予測はできないでしょうか。

吉田 狙われる地域としては大都市圏、実際に犯罪発生が多いですから、被害に遭う可能性があります。しかし錠前が全国規模で売られている以上、他の地域で発生しないとは断言出来ません。

――解錠する機具は売っているのですか。

吉田 広告を手に入れた、ということです。

――マッチポンプみたいに業者用の機具が犯罪に利用されていると考えられますか。

吉田 色々な事は想像出来るが、販売を規制する法律はありません。

――自分自身で防御する以外にないのでしょうか。

吉田 警察庁が犯罪の手口やメーカー、機器名まで公表すると逆利用される可能性も考えられます。しかし、 被害が明らかになって公表するのでなく、国民の皆さんに犯罪が危惧される状況を広く周知して、危機意識を持ち被害に遭う前に替えて頂く、それで被害を防止しよう、ということです。国民一人一人にドアの鍵を確かめてもらう。安全のために努力して下さい、ということです。消費者が混乱しないように、危険な錠前機種名、問い合わせ先リストを広く広報する様に製造業者にも要請しています。

―― 交換費用は決まっているのでしょうか

吉田 自分で取り替えると言うならできないことはない。メーカー側で説明するように要請しています。しかし、そのような事は苦手だと言う方は業者の出張費など交換費用がかかるでしょう。

――高額な負担であれば、消費者は交換を躊躇すると思います。

吉田 警察としてはカム送り対策について国民に公表して国民に注意を喚起すると言うことだけでなく、他の手口もある事ですから、鍵の問題、侵入盗全体の防犯対策に関心を持って頂く事が大切と考えています。そのために全国地域安全運動を10月実施します。一連の手口、手口に応じた防犯対策を進めようとしています。

――犯罪の中でも侵入盗というのが、今は一番大きな問題ですか。

吉田 そうですね。一番大切なことは生活の本拠の平穏です。事務所や路上強盗より生活の本拠の安全が壊されることは不安感が多いと思いますね。侵入盗も窃盗だけでなく強盗、殺人も有り、凶悪犯が増えています。殺人は血縁とか、職場関係とか何らかの関連性のある人間関係の中で起きることが多いが、侵入盗は何も関係の無い人が突然入って来るのですから不安感は強い。路上だと暗い道は歩かない、とか、危険と思えば外に出ないとか、何らかの防犯の知恵があるが、家に侵入してきては守りようが無いですよね。そういう訳で侵入盗対策が大事だと考えています。国民の皆さんが「何処に何を聞けば良いか」それに応える広報、相談窓口などが国民の混乱をふせぐために重要です。


(2002年9月25日号より)

戻る