風の軌跡(206)

お彼岸の日に

 小型トラックから降りてきた男の人が、運転席のドアを閉めながら、助手席から降りた相棒に声をかけた。
「オイ、あの空を見ろ。雲がこちらに向かってくる。雨になるぞ。早く終らせよう」
 たまたま通りかかった私もあわてて振り返ると、灰色の雲が生きているようにこちらへ動いている。またまたゲリラ豪雨の来襲? この頃は通り雨などとうかつに見逃せない。命にさえ関わることがあるのだから。
 今回掲載した防災専門家お二人による対談の締めの言葉は、「これからは防災分野でもサバイバル意識を持って自衛しないと、生き残っていけない」「ゲリラに正規の軍隊手法で対応しても間に合わない」ということだった。
 昔のように五官を研ぎ澄ませて、空や風を見て、自分で危険を察知しなければならない。
 そして何より自分で行動しなければならない。想像するだけで気が重くなるが、嵐の中を緊急避難などで、消防団の人が1軒1軒知らせて回ると、たまに、『ここで死にたい』と拒絶して消防隊員を困らせるお年寄りなどがいる。説得に時間がかかり、逃げ遅れた消防隊員が亡くなった事例もある、という。
 緊急時の災害弱者の救済はどの地域でも大きな課題だが、弱者の自覚や協力が伴わなければ、新たな2次災害を呼び起こす。

 東京ビッグサイトで10月8日から開催される危機管理産業展では、弊社も自社ブースで新聞の無料配布を行い、また、緊急地震速報をテーマにしたセミナーも実施する。
 甚大な被害をもたらすと予測される地震の被害減少に、新しい技術がどれだけ貢献できるか、具体的な導入事例も含めて紹介される。セキュリティに完全はない、というのは、昔からよく言われるが、反面、数秒、数十秒の時間差が、人の生死を分けるのも、自然災害の恐ろしさ。紙面でも詳しく内容を紹介する予定。

   からりと晴れたお彼岸の休日、花屋の店頭には仏花が幾種類も並んでいた。黄、白、紫などの菊の花は今は一年中見られるようになって別に目新しいものではないが、やはり秋になると、なぜか輝いて見える。
 秋風の快い夕方、公園のベンチに座ると足元には緑色の艶やかなドングリが無数に転がっていた。今年の山の恵みは大丈夫だろうか。集中豪雨で都会は迷惑を受けたが、森や山の木の実や果樹の実りは大丈夫なのだろうか。
 野生動物は飢えていないのだろうか。
三林和美

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