風の軌跡(198)

脳が拒絶する情報

 5月14日から3日間、情報セキュリティの展示会が東京ビックサイトで開催された。当社も出展して、新聞の無料配布を行ったが、最初の1日で持ち込んだ新聞が全てなくなり、あわてて増刷、2日目の朝持ち込んだ。ところが午後早くなくなり、またもや3日目の朝、ストック用の新聞を運び込んだ。
 年に10回以上、セキュリティ関連の展示会で新聞を入場者に配っているが、このように新聞を3日間続けて持ち込む経験は始めて。改めて情報セキュリティへの関心が急激に高まっているのに驚いた。

   世の中で関心のある情報セキュリティの話と全く違うが、私のような年齢になると、物忘れが度々起きる。
『あれ、昨日お会いした人、お名前はエーと』
 自分の頭の中の情報の要、脳が若いときのように働かない。情報を正確に記憶しないし、物忘れ(一瞬の認識の遅れ)や情報の紛失なども起こる。
 ずいぶん前だが、高齢者の介護施設などをしばしば取材した。認知症のお年よりは一番新しい記憶から失って行く。徘徊老人が、「家に帰りたい」とさ迷うとき、数十年前の子どもの時の家を恋し、自分が連れ合いとともに子どもを育てた我が家ではない、と聞いた。
 この世に誕生して玉ねぎが大きくなるように、脳に知識や情報を重ねていき、やがてその外側から剥がれ落ちるように記憶を消していくのであろうか、などと想像した。

   パソコンでのうっかりミスや、改ざん被害を防ぐために、「大事な情報は必ずコピーしておいてね』と言われる。
 そのうち、人間の脳の中も一番働いているときに、「コピーしておいて」などという時代が来るのかも知れない。
 日本で大ヒットした韓国映画『冬のソナタ』は、主人公の不幸な少年時代の記憶を消して、他の人間の情報を記憶させたことから始まったロマンス。本当は怖い部分に注目する人はいなかったみたいだ。

   ミャンマーのサイクロンの被災者にも負けず劣らず、中国四川の大地震は、山が壊れ、建物が粉々に崩れ、川がせき止められ、被災者の絶望的な情況はテレビで見ていても胸が痛む。21世紀は災害多発時代と言われるが、日本でも直下型地震による死者の推計が出されているが、その数字の中に自分の命が含まれている、と考える人は少ないのかも知れない。新緑と街路の花が色とりどりに咲き誇る日本、不安な情報は拒絶か削除クリック。
 三林和美

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