風の軌跡(197)

軽くしなやかな建物

強い揺れで目が覚めた。「ついに来た、東京直下型大地震?」ほどなくまた大きな揺れ、3回ほどでおさまってひとまず安心。震源は茨城、栃木でまたもや緊急地震速報が間に合わなかった、という。気象庁のお役人の恒例の記者会見では、震度5での速報が確実になるには技術的にまだまだ未完成なので、「今後の課題」と率直に説明。納得してかえって信頼感が増してくる。
 安全といわれていたものが危険であったり、正しいと思っていた記載がごまかしであったりすることの多いこの頃、「危険」とか「できないことはできない」と説明されると、なんだか安心する。

   異動の季節、新しい異動先から連絡をいただくととても嬉しくなる。たかが新聞、小さな媒体、でもどこか良いところを見つけて読み続けてくれる。こういうことで励まされて、また今日も、エンヤラコ、エンヤラコと櫂をこいでいくんですね。
大変お世話になった方が埼玉のほうに移られて、ご挨拶に伺った。隣の県でありながらあまり出かけない埼玉県、新しい副都心駅に降りたのは初めてだった。
 改札口を出て、周りの光景に目を見張った。高いドームのような天井、外の明るさがそのまま建物内に広がる。巨大なテントのような軽やかな建物だった。自動車道や鉄道の上を交差してまたぐように作られて、人々が自由に往来できる。
 東京ドームが造られたときも、建築中の覆いがはずされ、巨大な卵のような姿が現れたときにはびっくり仰天した。車でそばを通るたびに、否応なしに視野に入ってくる丸い形、つい目が行ってしまうが、外観は軽くひ弱にさえ見えた。しかし、何万人もの入場者を守る耐震技術を始め、建物の素材も技術の粋を集めたものなのだろうと想像した。
 同じように北京オリンピックの紹介で度々出てくる〈鳥の巣〉といわれる丸いスタジアムも軽やかに見えるが、国の威信をかけた建築技術が駆使されているのであろう。
 堅固な建物が安全と考えられた昔に比べて、今は軽やかに、しなやかな外見の建物のほうが地震や火災など、もろもろのリスクに対して安全なのだろうか。
 「壁面がほとんどガラスで作られたような建物が多い。地震で粉々に割れないのですかね。」
 「ドームやアーチの天井が化学繊維で作られる日も来るのでは?」
 ガラスから強化ガラス、自然繊維から化学繊維などと、似て非なるものが技術の粋を集めて作られていく。
 人間の好みも逞しい男性や豊満な女性が好まれた昔に比べて、男性か女性か判断に迷うような中性的な人々が増えている。昔と変わらないのは、地震、雷、火事の怖さ?
 三林 和美

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