風の軌跡(185)

田園調布のセレブ様々

「田園調布の駅前で」と会う場所を告げられた。その方の住居が田園調布だと言うことは知っていたが、出かけるのは初めて。
「セレブの町だね」
なんとなく楽しくなる。
六本木や青山界隈の高層マンションに住むセレブとは違った、派手派手しくない人々が住んでいる印象を受ける。
 駅に着いて改札口を出ると、そこはまるで、趣味の良い公園の中に紛れ込んだ印象だった。空に向けた視界をさえぎる高層のビルはなく、低い建物が緑と和して静かなたたずまい。車の進入が規制されている。きょろきょろしていると、横断歩道からゆっくり歩いてこられる相手に気づいた。
 疲れたとき、又は新しい取り組みに迷っているときに、お会いしたくなる人がいる。いつでも適確な助言と、深い優しさに癒され励まされる。
セレブ、富裕の人々を今風にいうのかも知れないが、普通の人でも株や宝くじにでも当たったりぼろ儲けすれば一瞬で豊かになリ、豪華さを装うことはできる。しかし、わずか1時間の会話や又は一瞬の笑顔で相手を励ましたり、蘇らせる本当の意味のセレブは、一朝一夕には生まれない。
「朝、このあたりを散歩をして、30分ほど座禅をします」
 指差す方向を見ると整った街路を色づき始めた樹木が飾り、風景の中にその人が入ってしまう錯覚を覚えた。

 10年以上も前に、一度田園調布に来たことがあった。ご主人をなくした後、健康食品を売っている友達から「田園調布のお医者さんの家で、集まりがあるから来ない?」と誘われた。彼女は地道な仕事を嫌い、商品を会員組織を作って売る仕事にとっぷり使っていた。浄水器から始まり、お風呂、アロエやキトサンと、扱う商品は変わるが、会員を増やすことが大きな収入になるシステム、私は会員にはならないが良い商品なら買ってあげる、いわば小さなカモだった。彼女たちはたくましかった。田園調布の医者のうちで10数人の中年女性を前に医者の妻は言った。
 「田園調布に住み、医者と結婚するのが夢でした。実現した今、離婚して財産をもらい自由になるのが次の夢、今、主人は愛人をつくっています」
 グループのリーダーは「自分の成功で、夫も子供もアメリカに留学させ、私は希望通りに一人の生活を謳歌して皆幸せ。次の願いはピンクの家を建てること」とも言った。
真も疑も共に、田園調布のセレブには脱帽。 

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