風の軌跡(184)

独りっきりが死角

 危機管理産業展が終った。今年度から、テロ対策特殊装備展が始まり、新しい市場ができた、と、テレビでも繰り返し放映された。いよいよ重装備のセキュリティが注目を浴びる時代になってきた。
 弊社も2つの展示会に出展して新聞の無料頒布や書籍の販売を行ったが、GISや海外の学校の防犯対策など、専門性の高い本が好評だった。
 入場者には企業のみでなく、官公庁のご担当者も多かったようだ。記事でご協力いただいている方々が、弊社ブースにも立ち寄っていただいて、社員にとっては励ましにもなった。

   相変わらず、子どもを狙った犯罪が続き、小さな命が犠牲になっている。監視カメラをいくら増設しても、父兄や地域の人がどんなに見回りを強めても、今の時代は人の流入が激しく、死角は必ずできる。
「犯罪件数は減っている、と言われるが、体感治安はますます悪くなっている、と感じている人が多いのではないですかね」
 セキュリティ関連の集まりで、某設備機器会社の社長さんは言った。痛ましい犯罪の犠牲となった子供の死は、数字上では1件の犯罪でも、万引きや自転車盗の1件とは異なる。無数の人々に衝撃を与え不安を通り越して恐怖感さえ抱かせる。
スペインから帰国したばかりの人が言った。
「スペインでは学校の送り迎えに必ず親が付き添って、子どもを一人にするということはありませんよ」
大人が常時付き添えるような社会のインフラ整備も必要なのだろう。
 休日の昼下がり、商店街の喫茶店で、70代と見える女性が、大事そうに大きなバッグを抱えて座っているのを見かけた。時々バックの中をのぞいて「ばー」とか、あやす身振りをする。猫か犬に話しかけているのか、と思ったが、「眠いなあ」突然、子どもの声に似た、不思議な声が聞こえた。会話のできる人形と見えた。そのうち同年齢の友達が来て二人の老女は、まるで人間の幼児に接するように楽しそうだった。誰かと話したい、一人暮らしの人には切実な願い、これも一種のセキュリティ機器だ。

   若い社員が生き生き働いている。派遣社員が多い時代だが、弊社の仕事は一朝一夕にはできないし、使い捨てでは勤まらない。仕事を覚え育っていくのを見るのも楽しみ。彼らに夢を与えられるか、失望すればすぐ辞めていく。いつも試されているようだ。  

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