風の軌跡(177)

異民族はなぜ殺しあうのか。

 古書店の店頭で1冊百円コーナーに『なぜ異民族は殺しあうのか』という題名の本を見つけた。
「そうだ、なぜなんだ、イランやアフガニスタンの殺戮、アメリカ人、もちろん太平戦争下の日本人も・・・」
 興味を持ったがついついためらった。何しろ1冊百円の本、しかも作者名がカタカナ、翻訳物らしい。米欧や中東の一神教の国々の殺し合いは神を旗頭に掲げるので、殺戮に痛みがない。読む価値があるのかどうか。
 数日過ぎて、やはり知りたい、傲慢な意見でも読んで見たい、と出かけたら売れた後だった。誰かが大枚百円を払って、中東戦争解決のヒントがあったかも知れない本を買って行った。
 「残念!」と思いながらなお探していると『弟』という題名が目に入った。青い海の色のカバー、なんと裕ちゃんの話だ!、作者は今をときめく石原都知事。それがたった百円?。もう一度値段を眺めると「1冊百円、2冊、3冊でも百円」そうすると3冊買えば1冊33円。いいのかなあ、石原知事。奥付を見ると第7刷、なるほどもう十分に儲けたから良いんですね。
 早速その夜から夢中になって読んだ。二人きりの兄弟の弟への鎮魂の書。「血族」という章で、裕次郎のわがままを兄からとがめられ、裕次郎は兄を突き飛ばした。それを見た兄の長男が「親父に手を出すと俺が承知しない」と、裕次郎の胸倉を掴んで締め付けたと言うエピソードがあった。もはや兄弟といえども兄には親を助ける息子がいる。
 何千年もの間、祖先から自分に至るDNAの鎖、子供を持つとその命の連鎖に気づくという。裕次郎はこの世のあらゆる栄光に恵まれながら、病に苦しめられ、何よりも子供に恵まれなかった。長男に謝罪して帰る裕次郎の後ろ姿に、深い孤独と彼の心の虚無感を感じた、と記していた。恵まれたこの二人とは反対に血族ゆえに殺しあう兄弟も戦国の厳しい時代にはいた。

   メールで某大学院の学生から質問が来た。
『セキュリティ産業の定義は?』「知りません』半ばやけっぱち。暗号やワクチンなどの情報系、台風、洪水、津波などの防災、防犯、子どもの安全、いじめや自殺、最近は食の安全や核攻撃からの生き残り策までセキュリティ。社会環境の変化で次々拡大していく。親子が殺しあう今の日本、異民族も親子も、なぜ殺しあうのか、ぜひ知りたい。   

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