風の軌跡(119)

理性のタガが外れる時

日本・北朝鮮のサッカー戦は、懸念されたサポーターなどによる騒動もなく、無事に終わった。

さすが日本の警察、警備関係者はすばらしい。ほんの数年前までは、国際会議や国際イベントが大きな騒動もなく無事終了するのを当然と思っていたが、中国で開催されたサッカー戦の、無様な警備体制や暴徒化した中国人サポーターたちの映像やニュースを見てからは、見方が変わった。無事終了こそ主催者の最高の栄誉、「無事」は「綿密に計画し、実行した警備力」の結果である。特に北朝鮮との関係が微妙な時であるだけに、ほっとしている人は多いだろう。

群集が興奮するスポーツの試合では野次や怒号が飛交い、サポーターやファンが観客席でトラブルを起すことも多いらしい。

先日、ラクビーの早稲田・関東学院戦を観戦に出かけた人が、試合後に怒り狂っていた。試合の結果ではなく、観客席での学生のマナーに腹を立てていた。大学対抗なので、観客席は学生が大半を占めるが、OBや一般客も多い。試合が加熱して野次の飛交う中、早稲田ファンらしい熟年の男の人が後方から野次を飛ばした。その前方には関東学院の同色のウエアを着た部員たちが大勢で声援していたが、その中の一人が熟年男性の野次を聞きとがめ、振り向いて立ち上がった。男性を指差し、「おい、こちらに来い」と怒鳴った。多勢に無勢、指差された熟年の男性は「まあまあ」というように、手で謝る仕種をした、という。

ところがすぐ側で見ていてむかついた彼が腹を立てて叫びはじめた。

「たかがスポーツじゃないか、野次って何が悪い。

指差して脅すとは何事だ」

休憩の時にも、関東学院の部員席のすぐ側を通り、学生を睨み付けた。

「それは何十人という部員の集団だから恐いよ。しかし、学生の分際で、年長者を指差して脅すなんて失礼な。試合は大学だけで出来る訳でなく一般客が見に来て開催できるのじゃないか」
「学生の教育はどうなっているのか」と抗議の電話をしたい、といきまいていた。


驚いたのはたかがスポーツとはいえない感情の激しさ。冷静な日頃とは別人の様だった。

随分前だが同じような経験をしたことがある。離婚したばかりの知人にしばらくぶりに会うと、元亭主の話をする時には人が変わった。凄まじい嫌悪の表情でこちらが思わず目を伏せる。自分の感情を制御出来ないようだった。

人は休眠火山のように誰も熱い感情の固まりを抱え、理性を超える事態に出くわすとタガが外れて沸騰するのかも。めらめらと炎を吹出す。恐いなあ

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