風の軌跡(109)

ガイア女神の人差し指

この頃、元気がないように見受けるが・・・と気がかりだった方が、「腸にポリーブができて手術するから」とおっしゃった。ドキッとしたが、「腸で良かった、肝臓や肺でなくて」という思いだった。若い時から酒豪で知られていたので、その方が万一体調を壊す時は、肝臓に違いない、とかねがね思っていた。「不幸中の幸い・・・」ニコニコすると、「いや、血圧もものすごく高いのだから、上が240で、下が・・・・」と説明を続ける。

「腸にポリーブができて1年に2回病院でとってもらいながら、長生きしている知人がいます」

ご本人にとっては、不安に違いないと思うが、私の方は、良い情報ばかり耳に入れて、不安材料はこの際、横に置いて良かった、と連発した。相手のちょっと不満そうな表情は見ないことにして。

腸の病気は経験がないが、腸内の菌についてはかつて仕事で雑学的に聞きかじった。

人間の腸の中は栄養を吸収する繊毛が生え揃ってまるでお花畑のような美しい腸内フローラを形成している。そしてそのお花畑に生息するのが善玉菌のビフディス菌と悪玉菌のウオリス菌。両者の間には大量の日和見菌が生息し、体調が良くて善玉菌が活躍している時は、こぞって善玉菌になって人の健康に貢献する。万一、人間が体調を壊し、悪玉菌がはびこるようになれば、日和見菌はころっと悪玉菌に変身して陣取り合戦に参加し、善玉菌をやっつける。腸内を悪玉菌でいっぱいにして最悪の場合は人間を死に至らしめる。

このような善玉菌と悪玉菌、日和見菌の性情は、腸だけでなく、地中においても同じらしい。


今、防犯分野で防犯環境設計のベースとなる学説を耳にする。米国の犯罪学会・シカゴ学派が統計調査によって出した論文である。

「いかなる環境においても犯罪に関わらない善なる人が30%、反対に犯罪を犯す人30%、残りの40%は日和見人種」。人間の本質は、ばい菌の時代からそう違っていないのかもしれない。


ギリシアの哲学者が唱えたガイア伝説に「地球の母神ガイアは、地球が誕生して以来、海から陸へと生物を進化させてきた。その間に、何度か地球上の生物を一掃して新しい主役を登場させた。地球本体を守るために」というのがある。

子供をターゲットにしたテロ、環境破壊。拡散する破壊に美しい女神ガイアは地球のはるかかなたで、次の地球上の主役を準備しながら、ため息交じりに太平洋に人指し指を浸し、くるくるぱーと描いているに違いない。その証拠に、ほら度重なる台風の襲来。

戻る