風の軌跡(102)

次世代に負の遺産を残さない

朝、小鳥たちの鳴き声で起こされる。カラスと違って声がか細く可愛い声なので、騒音と思う人は少ないだろうが、多数の小鳥が大騒ぎしていればやはり凄まじい。季節のせいか、と思っていたが、マンション内の廊下の隅で、猫がじっと上をみ上げているのに気づいた。猫の視線を辿って見ると天井近くの隅っこに、小鳥が巣を作っている。藁や小枝がのぞいているだけで中の方は見えないが、奥の方でかすかにチチと雛の声。「もう卵から孵ってるよ」早速同じフロアーの猫を飼っている人に報告した。「やっぱりね、うちの猫もここに来るとじっと見ているから、おかしいと思っていたのよ。賢いねえ、ここならカラスにも狙われないし、寒くもない」

朝の小鳥たちの騒乱は虫や樹の実を見つけては雛に運ぶ子育て騒音だった。オスとメスで鳴き交わしながら一生懸命。ひとまず早朝は猫を外に出さずに小鳥の子育てに協力することにした。巣の中のチチという雛の声を聞いてから、朝、小鳥に起こされても、「小鳥も頑張ってるんだあ」と幸せな気分になるのだから、 勝手なものである。


インフラ企業が相次いでセキュリティ分野に事業展開を図っている。ガス会社やプロパン関連は主としてホームセキュリティ分野、何百万世帯と通じる既存のネットワークを活用して、孤老家庭の緊急通報や医・福祉分野も含めた緊急時対応サービスを計画している。ケーブルテレビ関連の企業は、テロなどの緊急時に、情報発信基地として活用出来ないかと探っていた。数日前には東京電力が送信塔等、関東一帯に設備してある鉄塔を防犯カメラ等の設置場所として提供する計画を公表した。山中や渓谷、町中の学校周辺にも電信柱はあり、登校路を見守る防犯カメラを設置できますよ、と言う事だろう。


セキュリティ事業が拡大することは当社にとって歓迎することだが、人間としてセキュリティの基本を考える時に、「人の問題」に尽きるように思う。次世代をいかに守れるか。国でも企業でも個人においても同じ事。三菱ふそうの欠陥車揉み消し事件は当時の経営者に対して警察の捜査が進められているが、愚かな経営者が残す負の遺産に事故でなくなった犠牲者はもちろんだが、同社の社員たちも気の毒である。役職に伴う責任を自覚しない経営者は多い。企業存続のためには人こそ資産、次世代の後継者を育てず、金の切れ目が縁の切れ目レベルの経営者では社員が迷惑、一心不乱に子育てをする小鳥にも劣る。せめて次世代を守る節度を持った経営者でありたい。

戻る